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ネオロマ中心はきちがえロマンスサイト。ラブΦサミットとか魔恋の六騎士の二次創作で更新中です☆

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songbird

アンジェリーク 魔恋の六騎士(キーファー×テレサ)











 



 
songbird
 

 音を立てないように注意を払いながら、テレサはゆっくりと扉を開いた。
 それからティ-セットを乗せたワゴンを、室内へ運び入れる。
 扉を閉めて、すべての動作を音もなく静かに終えたことを確かめると、テレサはほっと安堵の息をついた。
(キーファー…?)
 部屋の主(あくまでかりそめの、だが)を探し求める瞳が、執務机からその前に置かれた応接セットに流れて、そこで止まった。
 柔らかな羽毛のソファに座ったままで、金髪の青年が眠っている。
 騎士団の中にいる時は、けしてこんな姿を他人に見せたりはしない。
 しかし、別人に成り代わって王都に潜入しているという緊張感と、何より身内を手にかけたという罪悪感が、彼の精神を疲弊させているのだろう。
 キーファーがこの部屋で仮眠を取る機会は増えていて、だからテレサは、部屋へ入る時はなるべく音を出さないように気を配っていた。
(疲れてる、よね…)
 テレサは彼に近付いて、その隣に浅く腰掛けると、やつれた横顔を見上げた。
 陶磁器のように滑らかな肌は、白というよりは蒼白に近い。
 何か、肩にかける物を持ってこようと思い、テレサは立ち上がろうと腰を浮かせた。
「…何処へ行くのですか」
 その腕を、目を開けたキーファーが掴んで留めた。
「キーファー…起きてたの?」
「眠っていましたよ。お前が部屋に入って来るまではね」
「もしかして、起こしちゃった?」
「いいえ」
 キーファーは少女を引き寄せると、日なたの匂いがする髪に頬を寄せた。
 疲労に屈して眠ろうとしても、見るのはつらい夢ばかりで。
 だから―――。
「お前の気配は、ただ眠るよりもずっと心地良い」
 その言葉にほっとしたテレサは、体の力を抜いて彼にもたれかかった。
 目覚めよりも穏やかで、眠りよりも鮮やかな時間。
「歌を歌いましょうか?」
「そうですね…いいえ、今は結構です」
 これまで、キーファーが彼女の歌を断ることなどなかったので、テレサは少し驚いて顔を上げた。
 すると、鼻先が触れそうなくらいに、すぐ近くにキーファーの顔があって。
「あ…」
 唇に、あたたかな感触が降りて来る。
「…お前が歌っていると、キスができませんからね」
 そうつぶやいて見せた微笑みは、青空のように澄み切っていて。
 彼がこんな表情をするということを、この世でテレサ一人しか知らない。
(私は、貴方のもの)
 そして、貴方のその微笑みは、私だけのもの…。
「そういう顔をするものではありません」
 テレサがうっとりとして彼の頬に触れると、キーファーの笑みに皮肉の色が加わった。
「…そういう顔、って?」
「お前のその、幸福で堪らない、という表情ですよ。いつ正体がばれて殺されるかわからない、こんな極限状態で、よくそんな顔ができるものですね」
「だって、本当に幸せなんだもの」
 キーファーの言うとおり、二人が反乱軍の人間であることが知られたら、ただでは済まないだろう。
 それでも、互いの存在以外に頼るものがない、この時を愛おしく思わずにはいられない。
「怖いとは、思わないのですか?」
「思わないよ」
 迷いなんて、とっくに捨てていた。
「私が怖いのは、貴方を失うことだけ。だから、そうじゃない今は、とても幸福なの」
 たぶん、そう遠くない未来に、この日々は終わりを告げるだろう。
 その先にあるのが、つらい結末だとしても。
(私は、貴方のそばを離れない)
 決意を込めるように、彼の服の袖をぎゅっと掴む。
 キーファーは、その細い指先がかすかに震えているのに気付いて、そっと少女の肩を抱いた。
 満足そうに喉を鳴らして、テレサも彼のしなやかな背中に腕をからめる。
「―――もっと、もっと強く抱きしめて」
 痛いくらいに、激しく。
 私のなかに、貴方という傷を無数に残して。
 テレサの声に答え、抱きしめる腕にさらに力が込められた。
 まるで全身が彼に包まれているような、ひとつに溶け合ってしまえそうなくらいの抱擁。
「本当に、お前は、度し難い娘ですね…」
 キーファーの口からもれた溜息が、熱いさざなみとなってテレサの首筋をかすめた。
「度し難いって、どういう意味?」
「ふっ…」
 テレサが問いかけると、かすかな笑い声が聞こえた。
「お前が愛しくて堪らない、と…そう、言っているのですよ」
(このまま…)
 このぬくもりの中に身を沈めてしまえたら、どれほど心地良いだろう。
 けれども、これ以上彼女を、暗闇に引きずり込むことなどできない。
(―――だから、こうして抱きしめるだけで、いい)
 ありったけの理性をかき集めて、キーファーは自分の中の衝動をこらえた。
 それでも熱を増す体温と、鼓動の速さは抑えられなくて。
 テレサは彼の変化を漠然と悟りながら、どうしたらいいのかわからず、ただじっとしていた。
 泣きたいくらいの悲しさと、とろけそうな幸福感が、いっぺんに襲ってくる。
「私も、貴方が好き。…愛してる」
 そんなありふれた言葉では、足りないくらいに。
 私の細胞すべてが、貴方を求めている。
「愛してる、キーファー」
 伝えきれない想いにもどかしさを感じながら、テレサは歌うように何度も繰り返した。

 私は羽根を失くした小鳥。
(愛してる、愛してる、愛してる…)
 貴方のそばで、ただ歌い続ける。
 
 
 
 
 
 

 

 

 

初魔恋は、まさかのキーファーです。
私、本命はユージィンのはずなのに…次点だってカインなのに…???
坂本真綾さんの曲をひさびさに聴いていたら、どばっと何かが降りてきました。
書くのにけっこう時間がかかる方なんですが、これは3日くらいで書き上げましたね。
ちょっと目を離すと、キーファーがウラに行こうとするんで困りましたよ…!

それにしても、キーファーのイベントはいろいろとショッキングでしたね(汗)
恋はスリル、ショック、サスペンス!って、コナンの主題歌を思い出しますよ…

ぴくしぶにアップした時もことわりを入れておきましたが、たぶん時間軸が合わないです。
テンションあがって、一気に書いてしまったので…

 

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