let there be light
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あたたかで、ありふれた
- 2011/12/19 (Mon) |
- (創作)ラブΦサミット |
- CM(0) |
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ラブΦサミット(アレクセイ×ゆい)
あたたかで、ありふれた
「―――クリスマス?」
「はい。隼人さんはどう過ごすのかな、って思って」
ゆいの手からカップを受け取ったアレクセイは、あごにホットチョコレートの湯気をあてながら、ちょっと考え込んだ。
「もしかして、忘れてました?」
「ああ…いや」
(やっぱり忘れてたんだな)
あわてて取りつくろうとする姿が珍しくて、思わず笑みを浮かべた。
「すまない」
「あやまることなんて、ないですよ」
アレクセイはこの夏からずっと、フィギュアの大会に向けて練習を重ねていた。
大会で見事に優勝を決めたあとも、祝賀会やマスコミの取材やらでとても忙しくしていて。
12月に入ってからやっと、二人きりの時間をゆっくり持てるようになったのだから。
放課後、学園内のスケートリンクで彼の練習を見学して、時おりは二人で氷上を滑る。
その光景は、大会の前から変わることがない。
だけど、ひとつだけ、以前と違っていることがあった。
「私たち…その、婚約者なんだし、クリスマスを一緒に過ごしてもかまいませんよね?」
ゆいは緊張ぎみにそう言って、ひざの上で両手をきゅっと握りしめた。
左手の薬指にはめたダイヤのリングが、天井からの照明を受けて七色に輝く。
そのきらめきをアイオライトの瞳に受けて、アレクセイははっと自分の左手に視線を落とし、揃いのリングの存在を目で確かめた。
「ああ、もちろんだ」
アレクセイはきっぱりと言い、手にしていたカップをテーブルに置いた。
「きゃっ…!」
彼が突然ゆいの肩に手を回し、ぐっと自分の方へ引き寄せたので、思わず声をあげてしまう。
見上げると、すぐ近くにアレクセイの端整な顔。
こんなに性急に触れてくることはめったにないので、どぎまぎしてしまう。
「すまない、ゆい」
「どうして謝るんですか?」
「こういうことは、男の方から切り出すべきだと思う。忙しさにかまけて、そのことをすっかり忘れてしまっていた」
アレクセイはあいている方の手でゆいの手を握り、いとおしげに自分の頬にあてた。
「俺と一緒に、クリスマスを過ごしてくれないか、ゆい?」
「はい、喜んで」
もちろん、断る理由なんてあるはずがない。
「はりきって準備しますね。楽しみだな、クリスマスと誕生日祝い…」
「誕生日?」
アレクセイが目をみはって問いかけてきたので、ゆいはびっくりして聞き返す。
「隼人さんのお誕生日ですよ。12月24日。まさか、それも忘れていたんですか?」
ばつの悪そうな表情が浮かんで、ゆいは今度こそ声を上げて笑ってしまった。
「…さすがに幻滅しただろうな」
「いいえ、そんなことありません」
むしろ逆だ。
いかにもアレクセイらしくて、ますます好きになってしまう。
「誓って言うが、俺は自分の誕生日やロシア革命の記念日を忘れても、ゆいの誕生日は絶対に忘れたりなんかしない。だから…」
許してくれ、と言うのを、ゆいは彼の唇に指をあててさえぎった。
「謝らないで。私、隼人さんのことが本当に大好きだって、かみしめているんですから」
そう言うと、テーブルの上に置かれたカップを取り、水筒から2杯目のホットチョコレートを注いだ。
にっこり微笑み、アレクセイにカップを渡す。
アレクセイは気がそがれてしまったようで、カップを受け取ると、取りつくろうように一気に飲み干した。
「それで、当日はどんな風に過ごしますか?」
これ以上彼のプライドを傷つけてしまわないよう、ゆいは話題を変えた。
「ゆいは、どうしたい?」
「できれば私の部屋に招待して、二人きりでゆっくり過ごしたいと思うんですけど…」
「そうだな。俺も人目にさらされるのは、いいかげん嫌気がさしてきた。お前がいいのなら、ぜひそうしたいな」
もの静かなアレクセイの性格なら、そう言うだろうと思っていた。
レストランなどでは心からくつろげないだろうし、ゆいも―――彼に見惚れる女性たちの視線が気になって、きっと落ち着かない。
「もし、できるなら…大げさでなくていいから、ゆいが家族と過ごしてきたような、これからも同じように過ごしたいと思うような、そんなクリスマスがいいな」
抽象的な表現だが、と言うと、アレクセイはもどかしそうに頭を振った。
「これから先も、俺はフィギュアのことでゆいに負担ばかりかけるだろう。記念日を一緒に過ごせなくて、寂しい想いをさせることもあると思う。だから、二人でいられる時は、ちゃんとした思い出を作っておきたいんだ」
「隼人さん…」
ゆいは切なさに息を詰まらせた。
たとえ離れていても、ゆいが寂しくならないようにと、彼は気遣ってくれているのだ。
ごくさりげなくて、触れたら溶けてしまう雪のようにかすかだけれど。
―――アレクセイの優しさは、控えめでとても美しい。
「それからもうひとつ。料理は出来合いのものでかまわないから、ケーキだけはゆいの手作りがいい。もちろん…」
「チョコレートケーキで」
二人の声が重なる。
お互いの顔を見つめて笑いあうと、ゆいはアレクセイの広い胸にもたれかかった。
鼓動とともに、彼のまっすぐで温かい気持ちが伝わってくる。
(大丈夫)
ゆいにははっきりわかっている。
離れている時も、彼の心がゆいのそばにいることを。
―――ゆいの心が、いつだって彼を想うのと同じように。
「素敵なクリスマスと、それから、お誕生日にしましょうね。何年も、何十年も、ずっと心に残るくらいに」
「ああ―――そうしよう」
アレクセイの低い声には、わずかな揺らぎもない。
確かな返答に満足したゆいは、そっと彼の体から身を起こした。
そろそろ、休憩が終わる時間だ。
アレクセイは立ち上がり、脱いだ上着をゆいに預けると、リンクの端に出てスケート靴を履き始めた。
靴紐がきつく結ばれているのを確かめてから、ふと、こちらへ視線を向ける。
「―――ゆい」
「はい?」
声をかけられて、カップを片付けていたゆいが顔を上げた。
「Я люблю тебя(愛してる)」
アレクセイの瞳の青紫色が、透きとおるように明るくきらめく。
ゆいは思わず赤面してしまってから、覚えたてのロシア語をどうにか頭に思い浮かべた。
「Я также же(私もです)」
滑らかな返答に微笑んだアレクセイが、勢いよくリンクへ躍り出る。
(ああ、もう)
遠ざかる姿を見つめながら、ふいに目頭が熱くなった。
何気ない光景なのに、どうして、こんなにあたたかで幸せなんだろう。
ゆいは英語すらままならないのに、さらに難解なロシア語の勉強に追われている。
アレクセイだって、アマチュアフィギュアの頂点に立ったとはいえ、今度はその王座を守るという重圧があるのだ。
さほど順風とは言いがたい二人の未来なのに、それでも、どうにかなってしまうと思えてくる。
二人の絆さえ確かなら。
私たちは、どんなことだって乗り越えてみせる。
(愛があれば、なんていうのは陳腐かな)
だけど、私と隼人さんの間に流れるものは、やっぱり“愛”と呼ぶほかにないから。
陳腐で、ありきたりで、くだらないと笑われたっていい。
「隼人さん!」
勢いよく叫ぶと、スピンを決めたばかりのアレクセイが、サイド際を滑りながらこちらを見た。
「Я люблю тебя!(愛してる)」
冷気を押しのけて、響き渡る声。
アイオライトの瞳が一瞬だけ大きく見開かれ、それからすっと細められたかと思うと、全身の緊張とともに鮮やかな4回転ジャンプを決めた。
満足そうに拳を突き出すアレクセイに、力いっぱいの拍手を浴びせる。
“ありがとう”
彼の唇がそう動いたのを、ゆいは目ではなく心で、感じ取っていた。
「もしかして、忘れてました?」
「ああ…いや」
(やっぱり忘れてたんだな)
あわてて取りつくろうとする姿が珍しくて、思わず笑みを浮かべた。
「すまない」
「あやまることなんて、ないですよ」
アレクセイはこの夏からずっと、フィギュアの大会に向けて練習を重ねていた。
大会で見事に優勝を決めたあとも、祝賀会やマスコミの取材やらでとても忙しくしていて。
12月に入ってからやっと、二人きりの時間をゆっくり持てるようになったのだから。
放課後、学園内のスケートリンクで彼の練習を見学して、時おりは二人で氷上を滑る。
その光景は、大会の前から変わることがない。
だけど、ひとつだけ、以前と違っていることがあった。
「私たち…その、婚約者なんだし、クリスマスを一緒に過ごしてもかまいませんよね?」
ゆいは緊張ぎみにそう言って、ひざの上で両手をきゅっと握りしめた。
左手の薬指にはめたダイヤのリングが、天井からの照明を受けて七色に輝く。
そのきらめきをアイオライトの瞳に受けて、アレクセイははっと自分の左手に視線を落とし、揃いのリングの存在を目で確かめた。
「ああ、もちろんだ」
アレクセイはきっぱりと言い、手にしていたカップをテーブルに置いた。
「きゃっ…!」
彼が突然ゆいの肩に手を回し、ぐっと自分の方へ引き寄せたので、思わず声をあげてしまう。
見上げると、すぐ近くにアレクセイの端整な顔。
こんなに性急に触れてくることはめったにないので、どぎまぎしてしまう。
「すまない、ゆい」
「どうして謝るんですか?」
「こういうことは、男の方から切り出すべきだと思う。忙しさにかまけて、そのことをすっかり忘れてしまっていた」
アレクセイはあいている方の手でゆいの手を握り、いとおしげに自分の頬にあてた。
「俺と一緒に、クリスマスを過ごしてくれないか、ゆい?」
「はい、喜んで」
もちろん、断る理由なんてあるはずがない。
「はりきって準備しますね。楽しみだな、クリスマスと誕生日祝い…」
「誕生日?」
アレクセイが目をみはって問いかけてきたので、ゆいはびっくりして聞き返す。
「隼人さんのお誕生日ですよ。12月24日。まさか、それも忘れていたんですか?」
ばつの悪そうな表情が浮かんで、ゆいは今度こそ声を上げて笑ってしまった。
「…さすがに幻滅しただろうな」
「いいえ、そんなことありません」
むしろ逆だ。
いかにもアレクセイらしくて、ますます好きになってしまう。
「誓って言うが、俺は自分の誕生日やロシア革命の記念日を忘れても、ゆいの誕生日は絶対に忘れたりなんかしない。だから…」
許してくれ、と言うのを、ゆいは彼の唇に指をあててさえぎった。
「謝らないで。私、隼人さんのことが本当に大好きだって、かみしめているんですから」
そう言うと、テーブルの上に置かれたカップを取り、水筒から2杯目のホットチョコレートを注いだ。
にっこり微笑み、アレクセイにカップを渡す。
アレクセイは気がそがれてしまったようで、カップを受け取ると、取りつくろうように一気に飲み干した。
「それで、当日はどんな風に過ごしますか?」
これ以上彼のプライドを傷つけてしまわないよう、ゆいは話題を変えた。
「ゆいは、どうしたい?」
「できれば私の部屋に招待して、二人きりでゆっくり過ごしたいと思うんですけど…」
「そうだな。俺も人目にさらされるのは、いいかげん嫌気がさしてきた。お前がいいのなら、ぜひそうしたいな」
もの静かなアレクセイの性格なら、そう言うだろうと思っていた。
レストランなどでは心からくつろげないだろうし、ゆいも―――彼に見惚れる女性たちの視線が気になって、きっと落ち着かない。
「もし、できるなら…大げさでなくていいから、ゆいが家族と過ごしてきたような、これからも同じように過ごしたいと思うような、そんなクリスマスがいいな」
抽象的な表現だが、と言うと、アレクセイはもどかしそうに頭を振った。
「これから先も、俺はフィギュアのことでゆいに負担ばかりかけるだろう。記念日を一緒に過ごせなくて、寂しい想いをさせることもあると思う。だから、二人でいられる時は、ちゃんとした思い出を作っておきたいんだ」
「隼人さん…」
ゆいは切なさに息を詰まらせた。
たとえ離れていても、ゆいが寂しくならないようにと、彼は気遣ってくれているのだ。
ごくさりげなくて、触れたら溶けてしまう雪のようにかすかだけれど。
―――アレクセイの優しさは、控えめでとても美しい。
「それからもうひとつ。料理は出来合いのものでかまわないから、ケーキだけはゆいの手作りがいい。もちろん…」
「チョコレートケーキで」
二人の声が重なる。
お互いの顔を見つめて笑いあうと、ゆいはアレクセイの広い胸にもたれかかった。
鼓動とともに、彼のまっすぐで温かい気持ちが伝わってくる。
(大丈夫)
ゆいにははっきりわかっている。
離れている時も、彼の心がゆいのそばにいることを。
―――ゆいの心が、いつだって彼を想うのと同じように。
「素敵なクリスマスと、それから、お誕生日にしましょうね。何年も、何十年も、ずっと心に残るくらいに」
「ああ―――そうしよう」
アレクセイの低い声には、わずかな揺らぎもない。
確かな返答に満足したゆいは、そっと彼の体から身を起こした。
そろそろ、休憩が終わる時間だ。
アレクセイは立ち上がり、脱いだ上着をゆいに預けると、リンクの端に出てスケート靴を履き始めた。
靴紐がきつく結ばれているのを確かめてから、ふと、こちらへ視線を向ける。
「―――ゆい」
「はい?」
声をかけられて、カップを片付けていたゆいが顔を上げた。
「Я люблю тебя(愛してる)」
アレクセイの瞳の青紫色が、透きとおるように明るくきらめく。
ゆいは思わず赤面してしまってから、覚えたてのロシア語をどうにか頭に思い浮かべた。
「Я также же(私もです)」
滑らかな返答に微笑んだアレクセイが、勢いよくリンクへ躍り出る。
(ああ、もう)
遠ざかる姿を見つめながら、ふいに目頭が熱くなった。
何気ない光景なのに、どうして、こんなにあたたかで幸せなんだろう。
ゆいは英語すらままならないのに、さらに難解なロシア語の勉強に追われている。
アレクセイだって、アマチュアフィギュアの頂点に立ったとはいえ、今度はその王座を守るという重圧があるのだ。
さほど順風とは言いがたい二人の未来なのに、それでも、どうにかなってしまうと思えてくる。
二人の絆さえ確かなら。
私たちは、どんなことだって乗り越えてみせる。
(愛があれば、なんていうのは陳腐かな)
だけど、私と隼人さんの間に流れるものは、やっぱり“愛”と呼ぶほかにないから。
陳腐で、ありきたりで、くだらないと笑われたっていい。
「隼人さん!」
勢いよく叫ぶと、スピンを決めたばかりのアレクセイが、サイド際を滑りながらこちらを見た。
「Я люблю тебя!(愛してる)」
冷気を押しのけて、響き渡る声。
アイオライトの瞳が一瞬だけ大きく見開かれ、それからすっと細められたかと思うと、全身の緊張とともに鮮やかな4回転ジャンプを決めた。
満足そうに拳を突き出すアレクセイに、力いっぱいの拍手を浴びせる。
“ありがとう”
彼の唇がそう動いたのを、ゆいは目ではなく心で、感じ取っていた。
去年、ネオロマ相棒が主催するラブサミ同盟のクリスマス企画で書いたアレクセイ×ゆいです。
はりきって書いた割には、盛り上がらなくて、うーん…
でも、アレクセイだったらこんな穏やかな感じで書きたい!と思っていたので、
イメージどおりに書けて、自分では気に入ってたりします。
ロシア語での「愛してる=Я люблю тебя」は「ヤ リュブリュー ティビャ」と読むそうです。む、難しい…
ラブサミではアレクセイが一番好きです!
プレイしたての頃は「普通に好き」程度だったけど、創作書く時にあらためてプレイして、惚れましたvvv
でもこれ、クリスマス企画で書いておきながら、実はクリスマス当日の話じゃないんですよね…
当日の話も書きたいなぁ。
チョコケーキに目を細めるアレクセイとか!
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