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ネオロマ中心はきちがえロマンスサイト。ラブΦサミットとか魔恋の六騎士の二次創作で更新中です☆

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優しい月

アンジェリーク 魔恋の六騎士(ユージィン×テレサ)











 


 


 

優しい月


 塀の向こうからかすかな馬蹄の音が響き、テレサは寄りかかっていたポプラの木から離れた。
 門がわずかに開き、現れた影に、そっと近付いていく。
「おかえりなさい、ユージィン」
「テレサ…なぜここに?」
 黒馬を引いて入ってきたユージィンが、彼女の姿を見て驚きの声をあげた。
「なぜって…出迎えに来たんだけど」
 彼はレヴィアスの命令で、早朝から任務に出かけていた。
 少し手間取り、帰りが深夜になるらしいと聞いたのは、夕食後のラウンジでのこと。
 騎士団長はみんな、ささいなことだと気にも留めなかったけど、テレサは一人、館を抜け出して彼の帰りを待っていた。
「…何を考えているんですか」
 けれどもユージィンの声は、鋭いナイフのように刺々しくて。
「いくら砦の中とはいえ、こんな夜更けに一人で出歩くなんて、不用心にも程がありますよ」
 そこまで言って、ユージィンは何かに気付いたらしく、周囲を見回した。
「…まさかとは思いますが、ルノーも来ているのですか?」
「ううん、私一人だよ。ただでさえ魔導の訓練で疲れているルノーに、夜更かしなんてさせられないもの!」
「ほう…。せめてもの救いと言うべきでしょうか。ルノーを連れ出さない程度の分別は、持ち合わせていたようですね」
「…」
「ここにいてください。馬をつないできますから」
 ユージィンはうつむく彼女に一瞥もくれず、厩舎へ行ってしまった。
 すぐに戻ってきてくれたが、表情は硬く、冷たいままだ。
 テレサの持っているランプを受け取り、それからもう一方の手が、強引に彼女の手を取った。
「あ…」
「夜道で転ばれでもしたら、迷惑ですから」
 そっけなく言い放つと、指先だけを軽く握って、先に立って足早に歩き始める。
 つないだ手が離れないよう、テレサはほとんど小走りで追いかけなければならなかった。
「任務、大変だったね。無事に終わったの?」
「…すみませんが、あなたに軽々しく話せるような内容ではありませんので」
「あ、そうか…ごめんなさい」
 手を握る仕草と同じで、口調もひどくよそよそしい。
(迷惑…だったのかな)
 肩越しに横顔を覗きこむと、感情の見えない冷たい瞳に、息が詰まりそうになった。
―――どうして私は、わざわざ彼をねぎらおうなんて思ったんだろう。
(空を…見てしまったから)
 ラウンジの窓からふと見上げた夜空は、曇っていて、星も見えない。
 ほんのかすかな三日月の光が、雲間から差し込むばかりで。
 こんなに寂しい夜に、一人で帰ってくるユージィンのことを考えたら、いてもたってもいられなくなってしまった。
 ルノーのことで、いつもケンカばかりしている私たちだけど。
(でも誰かが出迎えてくれたら、きっと嬉しいよね)
 そう、思っていたのだけど―――。
 ユージィンの、触れるのが嫌でたまらないと言いたげな手の握り方や、せかすような足取りや、仕草のひとつひとつが彼女を拒んでいた。
 思った以上に、自分は嫌われているらしい。
 その事実をありありと見せつけられて、泣きたい気持ちになってしまった。
 目の奥が、じんと熱くなる。
 泣いてもユージィンがますます迷惑に感じるだけで、それは彼女にとってもつらすぎるから、テレサは必死で涙をこらえた。
 二人とも急ぎ足で来たので、騎士団長の住居となっている館までは、あっという間にたどり着いた。
 ユージィンの手が離れて、玄関の扉を音を立てないように開く。
 一歩引いて脇へ退いたので、テレサはうつむきながら中へ入った。
 彼が続いて入ってくるのを待ったが、いつまで経っても扉の閉まる音は聞こえない。
「…?」
 恥ずかしい気持ちでいっぱいになっていて、早く部屋に戻りたかったテレサは、不思議に思って顔を上げた。
 ユージィンは中に入らず、ただその場に立ち尽くしていた。
 夢見るような瞳が、雲が途切れて、夜空に姿を現した三日月を見上げている。
 そこに一切の感情は浮かんでいなかったけれども、さっきまでの冷淡さとは異なっていて、むしろ何物にも囚われない清々しさすら感じた。
「ユージィン…?」
 テレサの遠慮がちな呼びかけに反応して、ユージィンは視線を彼女へ移した。
「もう一度、言ってもらえませんか?」
「え?」
「私が戻ってきた時に、あなたが言ってくれた…」
 彼の言葉の意味を理解して、テレサの胸が高鳴った。
「…おかえりなさい、ユージィン」
 さっきと同じ言葉を繰り返し、ぎこちなく笑う。
「ただいま」
 ユージィンは固い蕾がほころぶように、はにかんだ笑みを浮かべた。
 それから瞳がほんの少し、陰りを帯びる。
「今日の任務は、あまり後味の良いものではなくて、気持ちを引きずってしまっていました。私の役目は、その…少し特殊ですから」
 彼の率いる月光騎士団の役割が、あまり表立って言えるような内容ではないことを、テレサは補給隊の仕事を通じて悟っていた。
 いつだってユージィンは、淡々とこなしているように見えたけれども―――。
「…泣かせてしまいましたか?」
 彼の手が伸びて、テレサの頬にそっと触れる。
 さっきまでの悲しい気持ちで潤んでしまった目元を、涙を拭おうと、白い指がゆっくりと撫でた。
「大丈夫」
 愛おしげな彼の仕草にどぎまぎしながら、かみしめるように言った。
 いらだちをぶつける相手が自分だったことを、むしろ嬉しいとさえ思う。
(私に甘えてくれたんだって―――思っても、いいよね?)
「お仕事、おつかれさま」
 不安気なユージィンに、彼女はつとめて明るい調子で答えた。
「あなたにそう言っていただけると…気持ちが軽くなります」
 ユージィンは安らかな表情でつぶやくと、もう一度、細く架かる三日月を見上げた。
「きれいな月ですね」
「でも、少し寂しくない?」
「私は好きですよ。満月の光は眩しすぎるけれど、三日月は穏やかに、優しく照らしてくれて…まるで、あなたみたいですね」
 彼のうっとりとした口調に、テレサは体の芯が熱くなるのを感じた。
 扉を閉めて、ランプを脇の棚へ置いたユージィンは、彼女の前に手を差し出した。
「…部屋まで送らせてください」
 館の中は仄かな灯りに照らされていて、手を引いてもらう必要はなかったけど。
 テレサには、彼の手を拒む理由なんてなかった。
 気持ちを重ねるように手のひらを重ね合わせると、互いの顔を見合って、そっと微笑みを交わす。
 ―――つないだ手の意味も、月明かりのあたたかさも、さっきまでとは違っていた。
 胸の片すみに架かる月が、小さな優しい光で二人を包み込む。
 ユージィンの手はひどく熱っぽくて、ただそれだけのことが、テレサは無性に嬉しかった。



 

 


 

 

 

今度こそ本命で!とがんばったユージィン×テレサ。
さらっと書くつもりでしたが、無駄に長くなってしまいました…
ユージィンはしっとりと書きたくて、でもその場の空気とか表現するのが難しいです。
キスくらいさせちゃおうかとも思いましたが、まだストーリー序盤のはずなので自重しました。
いや、いっそ盛り上がってテレサの部屋の前でズバっとやっちゃっていいよ!\(^o^)/
そんでもって、通りすがりのジョヴァンニにひやかされちゃえばいいよ!\(^o^)/

小野Dが出るゲームって、ネオアン以降ほとんどプレイしてないんですが、
演技がすっごく上手くなりましたね…(←)
言葉の切り方とか、「…」の表現とか、ちょっと圧倒されました。
いや、ファンじゃないですからね相棒!

…ユージィンの話に戻ろ。
彼にはツンとデレの切り替えスイッチがあるに違いないです。
どこにあるのかわからなくて、キャラが微妙に掴みがたいのですが…。
テレサとルノーの取り合いを見てるのが、楽しくて楽しくてたまらないです。
デレるのはもっと後でいいのに、と本気で思いました☆

でもって彼のEDは、スピカよりShalomが似合うと思うんだ…

 

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