let there be light
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Gloria
- 2012/03/06 (Tue) |
- (創作)魔恋の六騎士 |
- CM(2) |
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アンジェリーク 魔恋の六騎士(ユージィン×テレサ)
Gloria
「それでね、明日はみんなで、小屋の修理を手伝うんだ。そうしたらおばあさんがお礼に、タルトを焼いてくれるって…」
眠たげなルノーの声が途切れて、テレサは縫い物の手を止めた。
顔を上げて、かたわらのソファに目を向ける。案の定、ユージィンの膝に頭を乗せたルノーが、穏やかな寝息を立てていた。
以前のように、魔導で心身を消耗させることがなくなったせいだろうか。ルノーは見違えるほど健康な体になっていた。たびたびの発熱に見舞われることもなく、毎日、元気に村の学校へ通っている。
むしろ今日のように、年頃の少年らと郊外を駆け回り、遊び疲れて早々と眠ってしまうことの方が多いくらいだった。
「眠いなら、もう寝室に行きなさい、ルノー」
膝枕をしているユージィンの足は、ひどい骨折から癒えたばかりだ。
ルノーの頭をのせたままで、負担になってしまわないか心配で、テレサはそう呼びかけた。
「ルノー、起きて…」
反応がない弟にしびれを切らせて、揺り起こそうと身を乗り出すのを、ユージィンが軽く手を挙げて遮った。
「…もう少し、このままでいさせてあげてください」
小声でそう言うと、愛おしげにルノーの柔らかいくせ毛を撫でる。
その優しい姿に、騎士団にいた頃の思い出が重なって、テレサの口元に自然と笑みが浮かんだ。
今のユージィンには、過去の記憶の一切が失われている。崇拝していた主のことも、自分の半身のように慈しんでいたルノーのことも―――テレサのことも、何も覚えていない。
にもかかわらず、彼が自分たち姉弟に注ぐ献身と愛情は、以前とまったく変わることはなかった。
「どうかしましたか?」
テレサの物言いたげな視線に気づいて、ユージィンが顔を上げた。
「ううん、何でもないの」
ユージィン自身は、過去を持たない曖昧な自分に動じている様子はなく、むしろ不思議なくらいに平静でいる。故郷のノーグの村に連れて行き、ルノーの母親と共に4人で暮らし始めることも、すすんで受け入れていた。
それでも…自分の知らない「自分」の話をされるのは、けして良い気持ちではないだろう。
テレサは会話を終わらせようと、椅子から立ち上がり、厚手のショールを持ってきた。
寝入ってしまったルノーの体にかけてやるのを、ゆったりとしたニットに身を包んだユージィンが手伝いながら、そっと笑った。
「あなたが何を考えているのか、当ててみましょうか。…記憶をなくす前の私を、思い出したのでしょう?」
「―――どうしてわかったの?」
思わず言ってしまってから、テレサはあっと小さく叫び、手で口元を覆った。
この程度の隠し事もできない、単純な自分が恨めしい。
けれども、ユージィンはむしろ嬉しそうな表情で、水色の瞳を細めた。
「少し前から、あなたが私のことをとても幸せそうな目で見ることに、気づいていましたよ」
「嫌じゃ、ない?」
「いいえ」
気遣うテレサの問いかけに、ユージィンははっきりとそう答えた。
それから、立ったままの彼女の両腕を掴んで、その場に座るように促す。テレサが膝を折ると、不安をかき消そうとするかのように、両手でその頬を優しく包み込んだ。
「たぶん、あなたが今の私とは違う、別の人間を思い出すのではなくて。私の中にある光を見いだしてくれるような…そんな気がするから」
あなたやルノーと過ごした、かけがえのない日々を忘れてしまっていても。
本当の意味では、私たちは何も失っていない。
ルノーを慈しみ、テレサを愛する自分が、変わることなく存在している。
「…あなたと出会えて、私は本当に幸せです。昔も、今も。それだけは、この身体が覚えています」
かみしめるようなユージィンの言葉に、テレサは潤んでしまった瞳を瞬かせた。
「ユージィンは、何も変わっていないよ。相変わらずルノーには甘くて、私にはちょっと皮肉屋で…でも、やっぱり優しくて」
いいえ。本当は、変わってしまった。
消せない罪に人知れず苦しみ、狂気すらはらんでいた暗い翳りは、今の彼にはどこにも見えない。
―――それでいいのだ。
卑怯かもしれない。贖罪から逃げているのかもしれない。
だけど、ユージィンが記憶を失ったことと、ルノーから魔導の力が消え去ったこと。それはけして偶然ではないのだ。
神が…レヴィアスが起こした奇跡だと、テレサは信じていた。彼がルノーを返してくれて、ユージィンの身を自分に委ねてくれたのだと…。
その意志を、私は未来へ繋いでいこう。
私はあなたの小さな灯となって、その足元を照らし続ける。
いつまでも、いつまでも―――。
「記憶なんてどうでもいい。あなたが今、私のそばにいること。それだけが大切なの」
頬に触れるユージィンの手に、自分の手のひらを重ねて、テレサは微笑んだ。
胸の奥が、じんと熱くなる。わきあがる感情に押されてふるえる睫毛を、ユージィンの親指が優しく撫でた。
「ん…」
「ルノー…起こしてしまいましたか?」
ユージィンの膝がわずかに揺れて、その振動でルノーが目を覚ました。とろんとした瞳で、重たそうに身体を起こす。
テレサはあわてて、ユージィンの手を自分の頬から離した。
「もう少し、このままでも構いませんよ」
臆する様子もなくそう言うユージィンに、ルノーはテレサをちらりと見てから、ゆっくりと首を横に振った。
「ううん、もう寝室へ行くよ。お姉ちゃんが怖い顔してるから」
「なっ…!」
たちまち、テレサの顔が朱に染まる。
ルノーはソファから立ち上がると、大きく伸びをして、訳知り顔でテレサを指さした。
「早くユージィンと二人っきりになりたいって、そういう顔してるよ。おやすみなさい」
「ルノー!」
足早に居間を出る弟を追いかけて、テレサが叫んだが、ルノーはもう自分の寝室に入った後だった。
「まったく、大人をからかって…」
しかめ面でつぶやいたテレサは、背後に人の気配を感じて振り向いた。
ユージィンが居間の入り口で、吹き出しそうなのをこらえながら立っている。
「貴方がそんなに積極的な女性だとは、知りませんでした」
「ユージィンまで、もう!」
「冗談ですよ」
テレサの剣幕に、降伏するかのように両手を上げて―――ふいに、ユージィンの水色の瞳がいたずらっぽく輝いた。
「あっ…」
いつの間にか、ユージィンがすぐそばまで来ていた。ごくさりげない仕草で、彼女の背後の壁に手をつく。
あらがう余裕もなく、テレサは壁際へ追いつめられてしまった。
「…ルノーは勘違いをしていますね。二人きりになりたいと思っていたのは、私の方なんですから」
テレサの耳元で囁くと、彼女の赤毛を一房手に取り、香りを嗅ぎながら持て遊ぶ。
「綺麗な髪ですね。柔らかくて、とても良い香りがして…。私は、あなたにそう言いませんでしたか?」
「…そんなこと、初めて言われたよ」
ぴったりと身体を寄せてくるユージィンにどぎまぎしながら、テレサはやっとの思いで答えた。
するとユージィンは、不思議そうな表情を浮かべた。
「じゃあこれは? あなたの声は鈴のように愛らしくて、耳に心地よく響きます」
「ない…と思う」
「あなたのすべてが、愛しくてたまらない、と…これも、言ってはいませんでしたか?」
「ないよ」
ユージィンの想いを、直接的な表現で言われたことはない。でも、そう思ってくれているということは、ちゃんと知っていた。
言葉なんて必要ないくらいに、私たちは満たされていたから―――。
「やれやれ。どうやら私という男は、救いがたい無骨者だったようですね」
まったく情けない、とばかりに頭を振るユージィンがおかしくて、テレサはくすくすと笑った。
「それなら―――」
男性と密着していることも忘れて、笑い続けるテレサのあごを、ユージィンの細く白い指が持ち上げる。
目が合った、と思った瞬間、唇が重なった。
「キスは、どちらが上手ですか?」
額と額を擦り合わせながら、彼女を見下ろしたユージィンが低い声で囁いた。
「上手いとか下手とかはわからない、けど…」
「けど?」
「…もっとしてほしいって思う」
頬を染めて、消え入りそうな声でテレサが言うと、ユージィンが感極まった吐息をついた。
彼女の背中に手を伸ばし、自分の胸に強く引き寄せて、もう一度唇を重ねてくる。
ユージィンの情熱をもっと深く受け入れたくて、テレサは彼の身体にしっかりとしがみついた。
―――記憶を失う前の彼と最後にキスしたのは、革命決行の日、皇帝の城でのこと。
燃えさかる炎の中、駆り立てられるような激しい焦燥感にかられて交わしたキスも、焼けるように熱かった。
あの時の追いつめられた感情とは違う、優しいキス。
それから、とろけるように甘い、恋人同士のキス。
ひとつひとつに、違う思い出があって、違う切なさに胸がしめつけられる。
ルノーはつらい体験を経て、少年から大人へ成長しようとしている。ユージィンも過去の呪縛から解き放たれて、晴れ渡った青空みたいに笑うようになった。
テレサは…自分で言うのも気恥ずかしいけど、体つきや仕草が、少しは女らしくなったと思う。
騎士団の革命は、ついに果たし得なかった。
けれども、多くの惑星で領主への反乱が起きていて、村にも不穏な情勢が伝わってくる。皇帝の統治は末期を迎えていて、新しい政治形態が必要なのだと訴える学者もいた。
季節は変わり、時はうつろい…。
世界のすべてが、変わり続けている。
永遠なんて、どこにもなくて。
―――ただ愛だけが、少しずつ形を変えながら、途切れることなく流れ続ける。
久しぶりの魔恋です。ユーテレです。
まともにED後の話を書くのって初めてなんですね、そういえば。
スチル絵からいろいろと妄想を発展させてみました。
何だこいつ、と思われるかもしれませんが、コレ書いてようやく「あのEDはアリだったんだなぁ…」としみじみ思ってます。
ユージィンはきっと、忘れることでしか前に進めなかったんだろうな、と。
でもね、まっさらな気持ちになってまた、レヴィアス様に出会ってほしいです。
大好きなテレサと可愛い弟のルノーと、尊敬するレヴィアス様の元で戦ってほしい。
…やっぱり虫が良すぎるかなぁ、そんな展開。
タイトルは魔恋のエンディングテーマを歌っている、カノンさんの歌から。
アニメ「エンジェル・ハート」のテーマソングとかになってるそーです。
主題がイマイチ掴めてませんが、別れの歌に聴こえるのに、明るく幸せそうな感じで好きな歌です。
英語バージョンもオススメ!
COMMENT
無題
そうですよね。ユージィンはこの形のENDの方が幸せかもね。
ユージィンのGOODENDは、ルノーも生存できたので私は良かった~と思ってます。
3人で仲良くいつまでも暮らして欲しいですよね。
それにしても、ユージィンは色っぽいな~
良かったですよね!
ユージィン色っぽいですか? え、カマっぽいという意味で…(苦笑)
ユージィンEDでのルノーは、すごく大人びたというか、お姉ちゃんを支えるんだ!って気概を感じるのが嬉しいですvvv
イイ男に育っておくれよ~!!
BADではちょっと可愛そうですが、「ユージィンが帰ってくたら、おかえりって言ってあげるんだ」ってくだりが温かくて、妄想が膨らみます…!