let there be light
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ラブ☆トライアングル
- 2012/09/09 (Sun) |
- (創作)魔恋の六騎士 |
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アンジェリーク 魔恋の六騎士(ウォルター→マリア←ジョヴァンニ)
……なんかよくわからない矢印が表示されていますが、ちょっと趣向を変えて。
(※先週しぶに上げたものと同じ内容です)
(※主人公以外のキャラとのカップリングに抵抗がある方はご注意ください)
……なんかよくわからない矢印が表示されていますが、ちょっと趣向を変えて。
(※先週しぶに上げたものと同じ内容です)
(※主人公以外のキャラとのカップリングに抵抗がある方はご注意ください)
ラブ☆トライアングル
「もう、どこにしまったのよ、あのバカ兄貴!!」
貝殻やらトランプのカードやら皺くちゃのバンダナやら、統一性のないそれらが乱雑に詰め込まれた引き出しを、マリアはたたきつけるように元に戻した。
「ちょっと落ち着けよ、マリア」
ベッドの下をのぞき込んでいたウォルターが顔を上げて、なだめようと声をかける。
自分もかなり血の気の多い方だと自覚しているが、マリアの気性の激しさも相当のものだ。訓練で海竜騎士団の荒くれ男たちを威勢良く罵倒する姿を見るたびに、ウォルターの背筋まで凍りつきそうな思いがする。
ただ、感情をいつまでもひきずるような湿った性格ではなく、サバサバして面倒見がいいので、団員たちには慕われていた。むしろ戦女神のように崇められている、といった方が正しいのかもしれない。
ウォルター自身も、兄と慕うゲルハルトの妹だからという理由だけではなく、明るくはっきりした物の言い方をする彼女のことを気に入っていた。
歳もほとんど変わらないし、港町出身の自分と海賊育ちの彼女とは気性が似ているのか、とても話しやすい相手だ。
「落ち着ける訳ないでしょう! 兄さんのせいで、あたしがイヤミ野郎にネチネチ文句言われてるのよ!」
厳しい口調で怒鳴ってから、マリアは気まずそうな笑みを浮かべてうつむいた。
「ごめん、あんたに八つ当たりすることじゃないよね。一緒になって探してくれてるのにさ」
意外に整った顔立ちは美しいというより凛々しいといった形容が似合うが、こんな風に瞳を伏せると、年頃の少女らしい可愛らしさが漂う。
思わず見とれてしまったウォルターが、はっと我にかえって頭を振った。
「気にすんなよ。それよりとっとと書類を見つけて、キーファーに叩きつけてやろうぜ」
ゲルハルトは昨日、騎士団長として近隣の惑星へ交渉事で出かけいた。
まあ交渉といっても、頭に脳味噌ではなく筋肉が詰まっているようなゲルハルトにそんな高度な芸当ができるわけもなく、それを命じたキーファーもまったく期待はしていない。キーファーが相手方の領主と話し合いを重ねた結果、取り付けることができた支援を約束する書状を持ち帰るのが、彼の役目だった。
昨夜遅くに戻ってきたゲルハルトがそれを持っていたことは、同行した海竜騎士団の兵に確かめている。だが書状はキーファーの手には渡ってはいないということで、不在のゲルハルトにかわってマリアが呼び出され、たっぷりの嫌味とともに書状を見つけだすことを約束させられてしまった。
たまたまゲルハルトの部屋を通りかかったウォルターが、捜索に悪戦苦闘するマリアに気づいて、手助けを申し出たという訳だ。
もっと親しくなりたいと、ひそかにそう思っているマリアに良いところを見せる絶好の機会なのだが、しかし―――。
ウォルターは部屋の中をざっと見渡して、思わずため息をもらした。
何というか、絶望的な部屋だ。
飾り気はないが柱や壁はいかにも重厚な造りで、武骨なゲルハルトの人柄を思わせる。しかし、床一面に散らばった本や海図や酒瓶諸々や、転がったままの椅子、物置き棚と化したテーブル……まるで、泥棒に家探しでもされたような有様だ。
ウォルターも几帳面というのはほど遠いが、あまりにもひどい。
あれこれと親身になって面倒をみてくれるゲルハルトが、自室にだけは絶対に入れてくれないことに寂しさを感じていたのだが、ようやくその理由がわかった。
この荒れ海から、たった一枚の書類を見つけださなければいけないとは……。
「なあ、やっぱり使いを出してゲルハルトを呼び戻した方がいいんじゃねえか?」
「それはダメだって言ったでしょ」
取り付く島もなく、マリアが断言する。
部屋の主はこのところ急接近している補給隊のテレサと、二人だけで海へ遠出していた。まだ恋人同士とまで呼べるような色っぽい仲にはなっていないようだが、だからこそ―――。
「あの二人の邪魔をするのは、絶対にダメ。テレサを逃しちゃったら、兄さんのところにお嫁さんに来てくれそうな奇特な娘なんて、北の海のアザラシくらいしかいないもの」
しかも、気立てがよく料理も得意で、意外と度胸もある彼女のことをマリア自身も気に入っている。小姑としては、何としてでも手放してほしくない相手なのだ。
「だから、この問題はあたしたちで解決しないといけないの。わかったら、そっちの木箱も探して!」
「はいはい……」
げんなりした表情で応じたウォルターは、手近に積まれた木箱の蓋を開いた。衣類を収納しているようだが、下着から上衣、はてはブーツまで無造作に放り込まれていて、ひどい状態だ。
こわごわと中を探って書類のたぐいがないことを認めると、今度はその隣の一回り小さな箱に手を伸ばした。こちらは道具箱らしく、ナイフや錐、皮紐の切れ端がごちゃごちゃと入っている。
あぐら座りをして箱を膝に置くと、ウォルターはベッド際にいるマリアの姿をちらりと盗み見た。
「……なあ、マリアはさ」
「どうしたの?」
「その、一緒に海に行くような相手とか、いないのか?」
「何よ、藪から棒に。いないわよ」
ベッドサイドに置かれた棚の引き出しをひとつひとつ開けていたマリアが、いぶかしげに顔を上げた。
「あたしを誘おうなんて根性のある男は、この騎士団にはいないの。残念ながらね」
「おれは、あるぜ」
緊張でうわずった声音でウォルターが言うと、マリアは笑いながら手をひらひらと振った。
「はいはい、せいぜいがんばってね。兄さんもアンタには期待してるんだからさ」
「そうじゃなくて!」
マリアはウォルターの言葉を、単なるお世辞としか受け取っていないらしい。苛立ちながら叫ぶと、ウォルターは勢いよく立ち上がった。
床の上の障害物を避けながら、唖然とした表情を浮かべるマリアに近づく。
衝動にまかせて細い両肩に手をかけたが、薄い布地ごしに滑らかな肌の感触が伝わってきて―――すぐに手を下ろしてしまった。
「おれ、マリアは美人だと思う」
「そう? ありがと」
「ちょっと怖いけど、根は優しいしさ、明るくていつもみんなの面倒を見てるし、一緒にいて楽しいし」
自分は何を言ってるんだろう。本当に言いたい言葉は他にあるはずなのに、なかなか口から出てこない。
マリアの海色の瞳が、何かを悟ったように光を増した―――ような気がする。
今だ。今ここで言わないと、絶対に後悔する。
ウォルターはゴクリと唾を飲み込むと、思い切って口を開いた。
「だから、つまり、海に、おれと、その」
「おや、何をしてるのかな~?」
ふいに、ここにいないはずの第三者の声が響き渡り、二人ははじかれたように声のした方向へ目をやった。
いつの間に来たのだろうか。扉の開かれた入り口に軽く寄りかかって、優美な姿が佇んでいる。
現れた人物の正体を確かめて、マリアとウォルターは同時に顔をしかめた。一人は相手への嫌悪感で、もう一人は重大な局面をだいなしにされた失望感で。
「何か用なの、オトコオンナ」
不快さを隠そうともせず、マリアが尖った声で言い放つ。しかしジョヴァンニはまったく臆する様子もなく、端正な口元をほころばせた。
「相変わらずつれないね、マリアちゃん。せっかく素敵な贈り物を持ってきたのに」
ジョヴァンニの右手にひらめいている白い物に気づいて、マリアがあっと声を上げた。
「それって、もしかして……!」
「今朝、ゲルハルトが僕の部屋に寄ったんだけど、その時に忘れていったみたいなんだ。僕もついさっき、街から戻ってきて気付いたんだけどね。これ、参謀の二人に渡しておかないとヤバいよねえ?」
「それをこっちによこして!」
駆け寄ったマリアが、書類に手を伸ばす。しかし指が触れる直前に、ジョヴァンニは書類をさっと自分の頭上へ掲げてしまった。
「おっと。……残念だけど、タダではあげられないなあ」
「ちょっと、どういうことよ!?」
「激しい戦場をくぐり抜けて姫君への捧げ物を持って来た騎士には、しかるべき褒美を与えるものじゃない? たとえばそう、姫君の口づけ、とかさ」
そう言って含み笑いをしながら、左手で意味ありげに自分の頬を指さす。
マリアの形の良い眉が、怒りでつり上がった。
「……あのさ、人間にわかる言葉で話してくんない?」
「ふざけるなよジョヴァンニ、マリアを困らせて、何が楽しいんだ!?」
「はいはーい、部外者は黙っててくれるかなぁ?」
後から来たウォルターも声を荒げるが、ジョヴァンニはまったく意に介さない。
「ウォルターは部外者なんかじゃないわよ。今だって書類探しを手伝ってくれてたし、アンタなんかよりもずっとしっかりした騎士団長だわ!」
好戦的に言い放つマリアの剣幕に、ジョヴァンニの表情がはじめて変化した。予想外の伏兵にでも出くわしたかのような、困惑の表情に。が、それは一瞬のことで、すぐにいつも通りの人を食ったような笑顔に戻る。
「ふーん、ずいぶんとコイツのことを高く買ってるんだねえ……。もしかして、マリアちゃんにとっては特別な存在だったりするわけ?」
「何よ、当たり前でしょ。こいつはね……」
マリアが背後にいるウォルターを、無造作に親指で指し示す。不覚にも、ウォルターの心臓は喉から飛び出しそうなほどに激しく跳ね上がってしまった。
「兄さんの弟分ってことは、あたしの弟分でもあるの。だからからかったり、いじめたりするのは許さないからね、わかった!?」
一瞬の間をおいてから、
「……ぷっ」
耐えかねたように、ジョヴァンニが吹き出した。
「おい、笑うことないだろ!」
なぜか言った当人のマリアではなく、ウォルターから怒りの声があがった。
「いやー、ごめんごめん。僕の早とちりだったみたいで。あ、書類ね。はい、どうぞ」
ジョヴァンニの態度がたちまち豹変して、あっけに取られているマリアに手の中の書類を押しつけた。
それからかがみこんで彼女の耳元にぐっと唇を寄せると、挑戦的な視線をウォルターに向けながら、甘えるような声で囁く。
「それを渡し終えたらさ、ラウンジに来てよ。街へ出たついでに、最近評判になってるお店のケーキを買ってきたんだ。南国フルーツがたくさんのってるやつ。好きでしょ?」
「……そうね、食べてあげてもいいわよ」
耳元に息がかかるのを避けようと身を反らしながら、しぶしぶという風にマリアが答えた。気が強くても女の子、やはりスイーツの魅力にはかなわないらしい。
「そうこなくちゃ!」
破顔一笑するジョヴァンニには目もくれず、マリアは部屋を出ようとして、ふと振り返った。
「ウォルター、あんたも来なさいよ。一緒に探してくれたお礼に、ご馳走するから」
「へへ、やった!」
ジョヴァンニが不快そうに顔をしかめたが、ウォルターはそれを無視して、廊下へ飛び出すマリアの後に続いた。もちろんジョヴァンニも、負けまいと後を追いかける。
ちょっと意外な気持ちで、ウォルターは横に並んだジョヴァンニの顔を盗み見た。
……彼にだって、そのくらいのことは容易に察しがつく。
マリアにキスをねだる様子が、ふざけているように見えて内心は必死そうだとか。
彼の買ってきたケーキが、マリアが食べてみたいと話題にしていた店のものだとか。
ウォルターのことを弟分だとマリアが言った瞬間、かすかに安堵の笑みを浮かべたことも。
(弟、か……)
というか、自分の方が年上なのだが。
まあ、マリアくらいの年頃の少女にとっては、同年代の少年なんて子供同然なのかもしれない。そんなハンデくらい、この先いくらでも挽回できるはずだ。
少なくとも、意地悪ばかりして気を引いているような誰かよりは、有利な位置にいるのは間違いない、と思う。
子鹿のように軽やかに跳ねるマリアの髪を見つめてながら、ウォルターはそんな風に考えて自分を鼓舞していた。
彼女の隣を歩きたくて、斜めに一歩踏み出す。と、脇からジョヴァンニが体ごとぶつかってきて、壁際に押しやられそうになった。
「ちょっと邪魔だよ、弟くん」
「何か言ったか、オトコオンナ」
「……」
「……」
「何やってるのよアンタ達。早く来なさいよ!」
ついて来ない二人に苛立ち、マリアが振り返って叫んだ。火花を散らし合っていた二人がはっと我にかえると、あわてて彼女を追いかける。
ウォルターはマリアの右隣に、ジョヴァンニは左隣に。
この勇ましい乙女が手を差し伸べるのは、はたしていずれの騎士なのか―――。
某所で「マリアとウォルターってお似合いだよね!」「ジョヴァンニってマリアのこと好きそう」という感じに盛り上がりまして、ぶわっとネタ浮かんでテンションだだ上がって……
書いちゃいました\(^o^)/
カップリングというほどでもない、どっちに転がるかも定かでない雰囲気ですが。
楽しかったです。どたばたラブコメ好きだぁ!!
殿方に甘い囁きとかされても、テレサたんなら照れて頬を染めるところを、
きっとマリアは「熱でもあんの?」とフラグ折りまくるんだと思います。
あきらめるなウォルター、ジョヴァンニ!
マリアもそのうち気づいてくれる!!かもしれない!!たぶん!!もしかしたら!!
あらためて、主人公以外とのカップリングとか「ないわ~…」と不快に思われたらすみません(-_-;)
ちなみにマリアはプレイ当時どういう連想によるものか、
ヨハネといい感じに……とか妄想してました。
まぁ彼は終盤あのような展開になってしまうわけで、傷ついたマリアをテレサがなぐさめる、とかいいな!って。
マリアってそんな湿っぽいキャラかな?と今では思ってますが。
むしろ「ヨハネてめぇ!」って立ち向かっていく展開希望(男らしすぎる)
FDでは(←まだ諦めないYO!)、セリーナも入れて女の子EDも欲しいなぁ。
3人3様に可愛い女の子たちがキャッキャしてるのを、そわそわしながら眺める騎士団長たちとか私得なんですけど。
「もう、どこにしまったのよ、あのバカ兄貴!!」
貝殻やらトランプのカードやら皺くちゃのバンダナやら、統一性のないそれらが乱雑に詰め込まれた引き出しを、マリアはたたきつけるように元に戻した。
「ちょっと落ち着けよ、マリア」
ベッドの下をのぞき込んでいたウォルターが顔を上げて、なだめようと声をかける。
自分もかなり血の気の多い方だと自覚しているが、マリアの気性の激しさも相当のものだ。訓練で海竜騎士団の荒くれ男たちを威勢良く罵倒する姿を見るたびに、ウォルターの背筋まで凍りつきそうな思いがする。
ただ、感情をいつまでもひきずるような湿った性格ではなく、サバサバして面倒見がいいので、団員たちには慕われていた。むしろ戦女神のように崇められている、といった方が正しいのかもしれない。
ウォルター自身も、兄と慕うゲルハルトの妹だからという理由だけではなく、明るくはっきりした物の言い方をする彼女のことを気に入っていた。
歳もほとんど変わらないし、港町出身の自分と海賊育ちの彼女とは気性が似ているのか、とても話しやすい相手だ。
「落ち着ける訳ないでしょう! 兄さんのせいで、あたしがイヤミ野郎にネチネチ文句言われてるのよ!」
厳しい口調で怒鳴ってから、マリアは気まずそうな笑みを浮かべてうつむいた。
「ごめん、あんたに八つ当たりすることじゃないよね。一緒になって探してくれてるのにさ」
意外に整った顔立ちは美しいというより凛々しいといった形容が似合うが、こんな風に瞳を伏せると、年頃の少女らしい可愛らしさが漂う。
思わず見とれてしまったウォルターが、はっと我にかえって頭を振った。
「気にすんなよ。それよりとっとと書類を見つけて、キーファーに叩きつけてやろうぜ」
ゲルハルトは昨日、騎士団長として近隣の惑星へ交渉事で出かけいた。
まあ交渉といっても、頭に脳味噌ではなく筋肉が詰まっているようなゲルハルトにそんな高度な芸当ができるわけもなく、それを命じたキーファーもまったく期待はしていない。キーファーが相手方の領主と話し合いを重ねた結果、取り付けることができた支援を約束する書状を持ち帰るのが、彼の役目だった。
昨夜遅くに戻ってきたゲルハルトがそれを持っていたことは、同行した海竜騎士団の兵に確かめている。だが書状はキーファーの手には渡ってはいないということで、不在のゲルハルトにかわってマリアが呼び出され、たっぷりの嫌味とともに書状を見つけだすことを約束させられてしまった。
たまたまゲルハルトの部屋を通りかかったウォルターが、捜索に悪戦苦闘するマリアに気づいて、手助けを申し出たという訳だ。
もっと親しくなりたいと、ひそかにそう思っているマリアに良いところを見せる絶好の機会なのだが、しかし―――。
ウォルターは部屋の中をざっと見渡して、思わずため息をもらした。
何というか、絶望的な部屋だ。
飾り気はないが柱や壁はいかにも重厚な造りで、武骨なゲルハルトの人柄を思わせる。しかし、床一面に散らばった本や海図や酒瓶諸々や、転がったままの椅子、物置き棚と化したテーブル……まるで、泥棒に家探しでもされたような有様だ。
ウォルターも几帳面というのはほど遠いが、あまりにもひどい。
あれこれと親身になって面倒をみてくれるゲルハルトが、自室にだけは絶対に入れてくれないことに寂しさを感じていたのだが、ようやくその理由がわかった。
この荒れ海から、たった一枚の書類を見つけださなければいけないとは……。
「なあ、やっぱり使いを出してゲルハルトを呼び戻した方がいいんじゃねえか?」
「それはダメだって言ったでしょ」
取り付く島もなく、マリアが断言する。
部屋の主はこのところ急接近している補給隊のテレサと、二人だけで海へ遠出していた。まだ恋人同士とまで呼べるような色っぽい仲にはなっていないようだが、だからこそ―――。
「あの二人の邪魔をするのは、絶対にダメ。テレサを逃しちゃったら、兄さんのところにお嫁さんに来てくれそうな奇特な娘なんて、北の海のアザラシくらいしかいないもの」
しかも、気立てがよく料理も得意で、意外と度胸もある彼女のことをマリア自身も気に入っている。小姑としては、何としてでも手放してほしくない相手なのだ。
「だから、この問題はあたしたちで解決しないといけないの。わかったら、そっちの木箱も探して!」
「はいはい……」
げんなりした表情で応じたウォルターは、手近に積まれた木箱の蓋を開いた。衣類を収納しているようだが、下着から上衣、はてはブーツまで無造作に放り込まれていて、ひどい状態だ。
こわごわと中を探って書類のたぐいがないことを認めると、今度はその隣の一回り小さな箱に手を伸ばした。こちらは道具箱らしく、ナイフや錐、皮紐の切れ端がごちゃごちゃと入っている。
あぐら座りをして箱を膝に置くと、ウォルターはベッド際にいるマリアの姿をちらりと盗み見た。
「……なあ、マリアはさ」
「どうしたの?」
「その、一緒に海に行くような相手とか、いないのか?」
「何よ、藪から棒に。いないわよ」
ベッドサイドに置かれた棚の引き出しをひとつひとつ開けていたマリアが、いぶかしげに顔を上げた。
「あたしを誘おうなんて根性のある男は、この騎士団にはいないの。残念ながらね」
「おれは、あるぜ」
緊張でうわずった声音でウォルターが言うと、マリアは笑いながら手をひらひらと振った。
「はいはい、せいぜいがんばってね。兄さんもアンタには期待してるんだからさ」
「そうじゃなくて!」
マリアはウォルターの言葉を、単なるお世辞としか受け取っていないらしい。苛立ちながら叫ぶと、ウォルターは勢いよく立ち上がった。
床の上の障害物を避けながら、唖然とした表情を浮かべるマリアに近づく。
衝動にまかせて細い両肩に手をかけたが、薄い布地ごしに滑らかな肌の感触が伝わってきて―――すぐに手を下ろしてしまった。
「おれ、マリアは美人だと思う」
「そう? ありがと」
「ちょっと怖いけど、根は優しいしさ、明るくていつもみんなの面倒を見てるし、一緒にいて楽しいし」
自分は何を言ってるんだろう。本当に言いたい言葉は他にあるはずなのに、なかなか口から出てこない。
マリアの海色の瞳が、何かを悟ったように光を増した―――ような気がする。
今だ。今ここで言わないと、絶対に後悔する。
ウォルターはゴクリと唾を飲み込むと、思い切って口を開いた。
「だから、つまり、海に、おれと、その」
「おや、何をしてるのかな~?」
ふいに、ここにいないはずの第三者の声が響き渡り、二人ははじかれたように声のした方向へ目をやった。
いつの間に来たのだろうか。扉の開かれた入り口に軽く寄りかかって、優美な姿が佇んでいる。
現れた人物の正体を確かめて、マリアとウォルターは同時に顔をしかめた。一人は相手への嫌悪感で、もう一人は重大な局面をだいなしにされた失望感で。
「何か用なの、オトコオンナ」
不快さを隠そうともせず、マリアが尖った声で言い放つ。しかしジョヴァンニはまったく臆する様子もなく、端正な口元をほころばせた。
「相変わらずつれないね、マリアちゃん。せっかく素敵な贈り物を持ってきたのに」
ジョヴァンニの右手にひらめいている白い物に気づいて、マリアがあっと声を上げた。
「それって、もしかして……!」
「今朝、ゲルハルトが僕の部屋に寄ったんだけど、その時に忘れていったみたいなんだ。僕もついさっき、街から戻ってきて気付いたんだけどね。これ、参謀の二人に渡しておかないとヤバいよねえ?」
「それをこっちによこして!」
駆け寄ったマリアが、書類に手を伸ばす。しかし指が触れる直前に、ジョヴァンニは書類をさっと自分の頭上へ掲げてしまった。
「おっと。……残念だけど、タダではあげられないなあ」
「ちょっと、どういうことよ!?」
「激しい戦場をくぐり抜けて姫君への捧げ物を持って来た騎士には、しかるべき褒美を与えるものじゃない? たとえばそう、姫君の口づけ、とかさ」
そう言って含み笑いをしながら、左手で意味ありげに自分の頬を指さす。
マリアの形の良い眉が、怒りでつり上がった。
「……あのさ、人間にわかる言葉で話してくんない?」
「ふざけるなよジョヴァンニ、マリアを困らせて、何が楽しいんだ!?」
「はいはーい、部外者は黙っててくれるかなぁ?」
後から来たウォルターも声を荒げるが、ジョヴァンニはまったく意に介さない。
「ウォルターは部外者なんかじゃないわよ。今だって書類探しを手伝ってくれてたし、アンタなんかよりもずっとしっかりした騎士団長だわ!」
好戦的に言い放つマリアの剣幕に、ジョヴァンニの表情がはじめて変化した。予想外の伏兵にでも出くわしたかのような、困惑の表情に。が、それは一瞬のことで、すぐにいつも通りの人を食ったような笑顔に戻る。
「ふーん、ずいぶんとコイツのことを高く買ってるんだねえ……。もしかして、マリアちゃんにとっては特別な存在だったりするわけ?」
「何よ、当たり前でしょ。こいつはね……」
マリアが背後にいるウォルターを、無造作に親指で指し示す。不覚にも、ウォルターの心臓は喉から飛び出しそうなほどに激しく跳ね上がってしまった。
「兄さんの弟分ってことは、あたしの弟分でもあるの。だからからかったり、いじめたりするのは許さないからね、わかった!?」
一瞬の間をおいてから、
「……ぷっ」
耐えかねたように、ジョヴァンニが吹き出した。
「おい、笑うことないだろ!」
なぜか言った当人のマリアではなく、ウォルターから怒りの声があがった。
「いやー、ごめんごめん。僕の早とちりだったみたいで。あ、書類ね。はい、どうぞ」
ジョヴァンニの態度がたちまち豹変して、あっけに取られているマリアに手の中の書類を押しつけた。
それからかがみこんで彼女の耳元にぐっと唇を寄せると、挑戦的な視線をウォルターに向けながら、甘えるような声で囁く。
「それを渡し終えたらさ、ラウンジに来てよ。街へ出たついでに、最近評判になってるお店のケーキを買ってきたんだ。南国フルーツがたくさんのってるやつ。好きでしょ?」
「……そうね、食べてあげてもいいわよ」
耳元に息がかかるのを避けようと身を反らしながら、しぶしぶという風にマリアが答えた。気が強くても女の子、やはりスイーツの魅力にはかなわないらしい。
「そうこなくちゃ!」
破顔一笑するジョヴァンニには目もくれず、マリアは部屋を出ようとして、ふと振り返った。
「ウォルター、あんたも来なさいよ。一緒に探してくれたお礼に、ご馳走するから」
「へへ、やった!」
ジョヴァンニが不快そうに顔をしかめたが、ウォルターはそれを無視して、廊下へ飛び出すマリアの後に続いた。もちろんジョヴァンニも、負けまいと後を追いかける。
ちょっと意外な気持ちで、ウォルターは横に並んだジョヴァンニの顔を盗み見た。
……彼にだって、そのくらいのことは容易に察しがつく。
マリアにキスをねだる様子が、ふざけているように見えて内心は必死そうだとか。
彼の買ってきたケーキが、マリアが食べてみたいと話題にしていた店のものだとか。
ウォルターのことを弟分だとマリアが言った瞬間、かすかに安堵の笑みを浮かべたことも。
(弟、か……)
というか、自分の方が年上なのだが。
まあ、マリアくらいの年頃の少女にとっては、同年代の少年なんて子供同然なのかもしれない。そんなハンデくらい、この先いくらでも挽回できるはずだ。
少なくとも、意地悪ばかりして気を引いているような誰かよりは、有利な位置にいるのは間違いない、と思う。
子鹿のように軽やかに跳ねるマリアの髪を見つめてながら、ウォルターはそんな風に考えて自分を鼓舞していた。
彼女の隣を歩きたくて、斜めに一歩踏み出す。と、脇からジョヴァンニが体ごとぶつかってきて、壁際に押しやられそうになった。
「ちょっと邪魔だよ、弟くん」
「何か言ったか、オトコオンナ」
「……」
「……」
「何やってるのよアンタ達。早く来なさいよ!」
ついて来ない二人に苛立ち、マリアが振り返って叫んだ。火花を散らし合っていた二人がはっと我にかえると、あわてて彼女を追いかける。
ウォルターはマリアの右隣に、ジョヴァンニは左隣に。
この勇ましい乙女が手を差し伸べるのは、はたしていずれの騎士なのか―――。
某所で「マリアとウォルターってお似合いだよね!」「ジョヴァンニってマリアのこと好きそう」という感じに盛り上がりまして、ぶわっとネタ浮かんでテンションだだ上がって……
書いちゃいました\(^o^)/
カップリングというほどでもない、どっちに転がるかも定かでない雰囲気ですが。
楽しかったです。どたばたラブコメ好きだぁ!!
殿方に甘い囁きとかされても、テレサたんなら照れて頬を染めるところを、
きっとマリアは「熱でもあんの?」とフラグ折りまくるんだと思います。
あきらめるなウォルター、ジョヴァンニ!
マリアもそのうち気づいてくれる!!かもしれない!!たぶん!!もしかしたら!!
あらためて、主人公以外とのカップリングとか「ないわ~…」と不快に思われたらすみません(-_-;)
ちなみにマリアはプレイ当時どういう連想によるものか、
ヨハネといい感じに……とか妄想してました。
まぁ彼は終盤あのような展開になってしまうわけで、傷ついたマリアをテレサがなぐさめる、とかいいな!って。
マリアってそんな湿っぽいキャラかな?と今では思ってますが。
むしろ「ヨハネてめぇ!」って立ち向かっていく展開希望(男らしすぎる)
FDでは(←まだ諦めないYO!)、セリーナも入れて女の子EDも欲しいなぁ。
3人3様に可愛い女の子たちがキャッキャしてるのを、そわそわしながら眺める騎士団長たちとか私得なんですけど。
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