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ネオロマ中心はきちがえロマンスサイト。ラブΦサミットとか魔恋の六騎士の二次創作で更新中です☆

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光あれ

遙かなる時空の中で3(リズヴァーン×望美)

3年くらい前にネオロマ相棒のお誕生日プレゼントで書いたやつ。
今のところ、唯一の遙か3です。
遙か3は譲×望美と朔と黒龍の過去話とか書きたいと思ってるんですけど…思ってるだけ\(^o^)/

7、8年ぶりくらいに書いた創作なので、情けないほどに文章ガッチガチですね…。
リズ先生で甘い雰囲気にするとか、難しすぎたよ!







 


光あれ

 

 

「寒くはないか? 望美―――」
 声をかけてから、リズヴァーンは自分の妻がここにいないことを思い出した。
(そうだ、今日は一人で過ごすのだったな)
 夫婦だけでひっそりと暮らす小さな庵が、やけに広く感じられる。
 麓の村で行われる豊年の祭に招かれ、望美がこの山中の庵を出たのは、早朝のことだった。
「夜には帰りますけど…寂しくはないですか」
 申し訳なさそうに言う妻の愛らしい表情が脳裏をよぎり、彼は声に出さずに笑った。
(そう言うお前の方が、よほど寂しそうだったな)
 寂しくないといえば嘘になる。誰かとこれほど長く、深く、生活を共にした記憶はほとんどない。
 九郎を弟子にしたこともあるし、龍神の神子や八葉と行動を共にしていた時期もある。
 しかし、これまでの彼の人生は、孤独が常であった。―――それが、彼にとっての贖罪の方法だった。
(先生は、すぐそんな風に考えるんだから)
 望美はいつもそう言って、弾けるように笑い、それから泣き出しそうな顔になる。
(私が幸せでいればいいとか、罪ほろぼしのためとか、そういうのはやめてください。私は、先生と二人で幸せになりたいんですから)
「――――」
 遠くの空で鳥がひときわ高く鳴き、彼の思考をさえぎった。
 見上げると、太陽はまだずっと高い位置にあり、暮れるにはあまりにも早い時刻だ。
 望美が帰るまでの時間の長さを思い知らされ、彼は形の良い眉をひそめた。
(お前のいない時間は、こんなにゆっくりと流れるのだな)
 黒龍を封印し、幾度も時空を超え、ようやくたどり着いた未来。
 時を遡るのではなく、二人で積み上げていく未来。
 はじめて龍神の神子に会い、それからの長い日々をただ贖罪に費やしてきた彼にとって、思いもよらない安らぎの日々だった。
 ほんのひと時、妻がそばにいない。そんなささいな出来事でさえ、寂しいと思うほどに。
(やはり私も、祭に行くべきだったかな)
 村の長は「ぜひお二方で」と申し出てくれた。
 しかし望美はともかく、自分のような異形の者が祭に招かれることを、こころよく思わない村人も多いだろう。そう考えて注意深く辞退し、望美ひとりを送り出した。
 彼女はこの庵に居を構えてから、村の女性たちと親しく交流していて、豊年を祝う祭をひどく楽しみにしていたから。
 何か、望美を追って村へ向かうための、うまい口実はないだろうか。
 忘れ物はないかと部屋を見渡すが、それらしい物はない。そもそも、村にいればいくらでも代用品があるだろう。
 雨が降りそうだから、という口実も考えたが、澄み切った秋晴れの空には、雨の気配は全くない。
 夜道は危険だから、と言えたらいいが、一族に伝わる結界の術に守られた山は、そこらの街道よりずっと安全な場所だ。
 うまい手は思いつかなかったが、どうにもこらえきれなくなって、彼は立ち上がった。
 口実など道々考えればいい。今は少しでも早く、望美の顔が見たい。
(お前も、こんな風に何度も、私を追いかけてくれていたな)
 「寂しい」と言って泣き、「こんなことは望んでいない」と怒りをあらわにして、お前はずっと私を追い続けた。
 それがどれほどの痛みと苦しみを伴うものだったか、今ならよくわかる。
 その傷を癒すために、お前が与えてくれるこの至福に報いるために、ただ在り続けよう。
 これまでも、これからも、ずっと。
 彼は愛用のマントを羽織ると、静かに庵を出た。

 

「―――先生?」
 彼の姿に気づいた望美が、息を切らせて走り寄ってくる。
「どうしたんですが、こんな所で」
「いや」
 庵を出てから大分経つが、ようやく木々の姿がまばらになり始めたくらいで、村への道のりはまだ遠い。
 思いもよらない場所で彼女に会い、すっかりふいをつかれてしまった。いろいろと口実を考えていたはずなのに、何も浮かばない。
 彼は自分を取り繕うことをあきらめた。
「お前に……会いたくなった。ただそれだけだ。いけなかったか?」
「そ、そんなことないです!」
 山道を歩いたために上気している望美の頬が、さらに紅くなった。
「……すごく、嬉しい」
「お前こそ、なぜこんな所に? 祭はまだ終わっていないだろう?」
 そうたずねると、望美は両手を自分の胸元で組み、きまり悪そうに笑った。
「寂しくなって……先生に会いたくなって、帰ってきちゃいました。いけませんでしたか?」
 小首をかしげるしぐさが愛らしくて、彼もまた笑みを浮かべた。
「いや、この上なく嬉しい」
「よかった!」
 望美が腕に飛びついてくる。
 ひとしきりその袖に顔をうずめてから、小袖をぱっとひるがえして、彼から離れた。
「帰りましょう。私たちの家に」
「ああ」
 伸ばされた白い手を、彼は恭しく取った。
「そうだな―――帰ろう。私たちの、家に」
 望美の手のひらは、ここまでの山道を登ってきたために、少し汗ばんでいた。
 その湿り気が、ひどく心地よい。
 夕暮れの風に冷えてしまわないよう、彼はその手を自分のそれで包み込んだ。
「どっちが先に『会いたい』って思ったんでしょうね?」
「無論、私の方だろうな」
「そう……なんですか」
「ああ」
 彼は望美の耳元に口を寄せ、そっとささやいた。
「寂しくてたまらなかった。再びお前に会えるまで、30年も待っていたのだから」
 会いたくて。
 会いたくて。
 永遠にも似た時間の中を、恋焦がれながら待ち続けてきた。
「それを言うのは反則ですよ、もう……」
 望美はくすぐったそうに頭を振って、照れたように笑った。
 その長い髪に夕陽が反射して、美しい光の輪が描かれる。
 言いようのない清らかさに、不思議な既視感を覚えて、我知らずその髪に口付けた。
 どれほど言葉で言い尽くしても、この愛おしさを伝え切れない。
 ただひたすら、強く願う。
 貴女の歩む道が、あたたかな光に満ち溢れているように。
 ―――あなたの隣で、あたたかな光を感じていられますように。


 暮れていく空にあらわれた一番星が、寄り添い歩く二人を優しく照らしている。
「……ねえ先生、ずっと、一緒にいてくださいね」
 冬支度をはじめた木々の間と、彼の渇いた胸の中に、少し控えめな望美の声が響いた。

 

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