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let there be light

ネオロマ中心はきちがえロマンスサイト。ラブΦサミットとか魔恋の六騎士の二次創作で更新中です☆

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約束

ブログ立ち上げた時に、テストでちょっと載せた泰明×あかねです。
そのうち削除するかもしれませんが、せっかくだからこのままにしておきます。
書いたの10年くらい前かなぁ…(-_-;)
当時、神田の古本市で妖怪とか怨霊に関する本を買って、
「これで泰神子創作は”問題ない”」とか浮かれていたのを思い出します…(遠い目)
最近は行間とか空けるの面倒で、あまりしないんですけど、この頃はやってますね。
やっぱりその方が見やすいかなぁ?










 



 

約束

 
「あの廊下のすみで眠っているのが、狢だ。昼間はああして眠り、夜になると行動する。それから屏風に寄りかかっている獅子のようなのが、白澤。―――聞いているのか、あかね?」
「はい、もちろんです!」

 彼の秀麗な横顔にみとれていたとはとても言えずに、あかねはあわててそう返事をした。

「では、そこの文箱の上にのっているのは?」
「えっと、たしか狒狒、です」
「そのとおりだ」

 泰明は目を細めて笑い、彼女の頭をすっと撫でた。
 優秀な教え子を誉めるかのように。
 傍目から見れば恋人の部屋で二人きり、肩を寄せ合って語らう仲むつまじい光景。
 しかしその話の内容は、色めかしいとはとても言えないものだ。
 あかねはそっとため息をつき、周囲を見渡した。
 最小限の調度品しかない、何とも殺風景な泰明の部屋。
 それを彩るかのように、半透明な何かが動き回っているのを、あかねの目は知っている。

(あれは確か、頼豪鼠………だっけ?)

 小さな魍魎たちは、身軽な体で几帳の上によじ登ったり、床に転がったり、好き勝手に動き回っていた。
 特に害もなく、いちいち払っていてはキリがないので、すっかり野放し状態なのだ。

(あなたのそばで、同じ時間を生きたい―――

 彼のために京へ残り、龍神の神子として以上の関係で接するうちに、気づいたことがある。
 泰明はかなりの教えたがりだ。
 ここ数日、左大臣の館へ巻物を持って訪ねては、あかねに陰陽道について教授し、また自分の部屋へ招いては、こうして実際に雑霊たちを示して説明してくれる。
 陰陽道なんてつまらないと思っているわけではない。
 やせこけた獣のような姿の魍魎たちも、はじめは見るたびに背筋が寒くなったものだが、慣れればそれほど気味悪くもない。
 だけど。

 ―――もうちょっと、ロマンチックなムードにならないかなあ………。

 彼を創り出した源。
 その力と世界の理との関係。
 もうひとつの世界の住人たち。
 まったく興味がないというわけではなくて、むしろ彼の見つめているもの、すべてを知りたいと思う。
 けれどもそれ以上に、あかねのことを見て欲しい。
 心も、体も触れ合いたい。

(朴念仁なところも大好きなんだけど)

 それだけでは物足りないと感じてしまうのは、欲張りだろうか?

「あかね?」
「はい、聞いています!」
「まだ何も言っていないが」
「………」

 恥ずかしさに身をすくめる少女にさして構わず、泰明は先を続けた。

「実はお師匠が、屋敷を一つ手に入れたのだ」

 その声は、いつも冷静な彼にしてはうわずっているようにも思える。

「さして広くはないが、私に与えてくださると言う」
「そうなんですか。良かったですね!」

 あかねは素直に祝福した。
 師匠である安倍晴明の屋敷で寝起きし、居候も同然である今の現状は、彼の年齢や才能にはふさわしくない。

(それに泰明さん自身の家なら、気兼ねなく遊びに行けるものね。二人の仲だって、少しは進展するかもしれない!)

「いつお引越しするんですか? 私に出来ることならお手伝いしますから、言ってくださいね。………どうかしましたか?」

 彼が不思議そうに見つめるので、あかねは口を閉ざしてしまった。

 あれ? 何かおかしなことを言ったのかな、私………。

「もちろん、一人で住むわけではない」
「わかってます。使用人のひととか、雇うんですよね」
「そうじゃなくて」

 もどかしげにかぶりを振ると、綺麗にまとめられた長髪がさらりと揺れる。

「つまりその、私は、お前に結婚の申し込みをしているのだが」
「え………」

 思いもよらない言葉に顔を上げると、彼の瞳とまともに光がぶつかった。
 澄み切ったトパーズ色のふたつの輝き。

―――結婚!?)
 この理知的な陰陽師の青年には似合わない、けれどあかねにとっては夢のような言葉。

「じゃあ新しい家で、私と泰明さんが一緒に暮らすってこと………ですか?」
「むろん、そうだ」
「二人だけで?」
「嫌なのか?」
「そんなこと、ありません! あの………ものすごく、うれしいです」

 うれしいなんて一言ではとても片付けられない。
 天にも上るような、とはきっとこういう気分だろう。

「泰明さんの奥さんになるんですね、私………」 

 溢れ出した涙を、彼が自分の袂でそっと拭ってくれた。
 まだその頬が異質なまじないの色に染まっていた頃、「自分は人形だ」と言っていたのが嘘みたいだ。
 優しくて素敵な、私の―――旦那様。
 あかねの口元から笑みがこぼれるのを見て安心したのか、彼は大きく息をついた。
 それから満足気に笑い、二人の未来など何処吹く風、といった様子の無関心な雑霊たちを見渡す。

「師匠が北の方と結婚する時、魍魎や式神の姿にひどくおびえられて、仕方なく屋敷に寄りつかせないよう、たいそう気を配ったのだそうだ。だから、お前もこの者たちを恐れるのではないか。それだけが気がかりだった」

(だからあんなに一生懸命、陰陽道や魍魎たちのことを教えてくれてたんだ)

 彼の教えたがりの理由にようやく思い当たり、あかねは納得した。

「だが心配はいらないようだな。それだけ近くに寄って来ても、まったく気にならないのだから」

 そう言いながら泰明が彼女のかたわらを指で示す。
 つられて顔を向けたあかねの瞳に、毛むくじゃらの子鬼の姿が飛び込んだ。
 彼(?)も、ぎょろりと鋭い目であかねを見上げる、刹那。

「きゃあっ!!」

 ふいをつかれた彼女は、みっともなく叫んで泰明の首にしがみついてしまった。

「やっぱり………やめるか?」

 あきれたようにため息をついた彼に、あかねはぱっと顔を上げて答える。

「いいえ大丈夫です! ちゃんとかわいがってあげられます!」

 泰明さんと結婚。
(そんな人生最大の幸福を、こんなことであきらめるもんですか)

「別にかわいがってやる必要はないのだが」

 過剰なまでの少女の意気込みを諭そうとする青年の言葉を、しかし彼女はほとんど聞いていなかった。

「それより一緒に暮らすなら、他にも考えなきゃいけないことがたくさんありますよ! 調度品はどんなものを選べばいいのかな? 藤姫に見立ててもらわないと。お仕事が忙しくても、夕食は一緒に食べましょうね。どうしても帰れない時や出張の時は、ちゃんとお手紙下さいね。休みの日は二人でゆっくり過ごしたいし………」
「そんなに取り決めがあるのか?」

 うんざりな様子でたずねる泰明に、あかねは可愛らしく小首をかしげた。

「やっぱり………やめます?」
「いや、問題ない。それがお前の望みならば、叶えよう」

 彼が一瞬の間も置かずに答えてくれたのが、うれしかった。
(小さな庭にはたくさんお花を植えて、季節ごとにお花見をするの。お部屋にもいっぱい飾って。この子たちが食べてしまわないよう、しっかり言いつけておかないと………)
 しなやかで、それでいて力強い腕に抱きしめられながら、少女の夢は尽きない。
 その将来にはせる夢の中に、当然のごとく自分の存在がある。
 深い感動をこめて見つめる泰明の目の前で、突然あかねが赤面した。

「どうした?」
「あの………その、寝所には、あの子たちを入れないようにして下さいね」
「なぜ?」
「だって、恥ずかしいじゃないですか」

 彼は本当に「結婚」の意味がわかっているのだろうか?
(聞くまでもないことじゃない!)
 ちょっとだけ。だけど。
 青年とのバラ色の未来に、何となく不安がよぎった。

(やっぱり朴念仁かも)

 少しだけ考えてから、泰明はまだ合点がいかない顔で、それでもうなづいた。

「わかった。―――そうすると、今もやはり寄りつかせてはいけないのだろうな」

 そう言うと、指先でそっとあかねの顎を持ち上げる。
 もう一方の手を軽く振ると、それだけで魍魎たちはぞろぞろと外へ出て行ってしまった。

「愛している」

 しんとした部屋の中、わずかに頬を紅潮させながら囁く。

「化生の者でさえ優しくいたわり、包み込んでしまう。そんな慈愛に満ちたあなたのそばにいられて、私はとてつもない果報者だ―――」
「私も」

(無愛想で教えたがりで、恋人との熱い語らいもできなくて)
 だけどあかねの一番欲しい言葉は、ちゃんと知っている。

「泰明さんを、愛しています」

 瞳のすみに、去りそびれた雑霊が一匹、とまどいながらうろついているのが映った。
 彼女が見ているのに気づくと、あわてて皺だらけの手で両目を覆い、二人に背を向ける。
 安心したあかねは自分も瞳を閉じて、ゆっくりと近づく泰明の唇を待った。

(朴念仁だなんて、とんでもない)

 きつく抱き寄せられ、重ねられた唇の熱い感触に気が遠くなりながら、あかねはそう思っていた。

 


 約束された未来。
 明日も明後日も、これから先ずっと、同じ時間を生きていける。

 




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